戦略自衛隊第7師団
戦略自衛隊の中で唯一の機甲師団である
機甲師団とは、戦車部隊を中心に、戦車に随伴する自動車化・機械化された歩兵部隊、同じく自動車化された工兵・砲兵・偵察・通信などの諸兵科の部隊から構成される師団のことで、機動力に富、3個戦車連隊を中核とし、重戦力による機動打撃を担当する人員約7,000名の部隊である。
国内最強の部隊と言っていい・・・・
現在北部方面隊に所属する、この師団に第三新東京市への配置転換、移動命令が下った。
その第七師団所属の高速輸送ヘリが、第三新東京市に向かって飛んでいる。
その中には第七師団師団長の山内健治(やまうちけんじ)陸将、副師団長の鈴木良和(すずきよしかず)陸将補 幕僚長の坂田洋一(さかだよういち)一等陸佐が搭乗していた。
山内はこの 配置転換の命令を聞いた時、怒りを通りこして、呆れ返った、任務は第三新東京市の防衛である。
防衛戦だとすると打撃部隊である第七師団は必要ない・・・
(我が師団の使命は陸上戦において、機動力を生かし、敵に対し打撃を与える事であって、陣地戦を戦う事では無い、むしろ第二師団や第三師団の方が防衛戦に向いている・・・・機動力を生かせないのなら機甲師団の意味が全く無いではないか、火力を重視するなら火砲をもってすれば良い・・・・)
話によると第七師団を要望したのはネルフの統合作戦本部長の天宮らしい・・・
(あの小憎21世紀の英雄だかなんだかしらんが、戦略的な配置も解らんで、何が英雄だ・・・しかも戦時昇進と称して、陸将の位など・・・)
(同じ位ならこちらが先任な分けだし、向こうも強く言えまいが、あの特務権が発動されれば否応なしに命令を聞かなければならない・・・全く馬鹿馬鹿しい事だ。)
(それにあの使徒とか言う化け物が本当にあそこに来ると言うのか、疑わしい限りだ・・・・)
山内は同じ事を繰り返し思いながら思わず。
「はぁ〜っ」とため息をついいた。
幕僚長の坂田は山内のそんな悩める姿をみて、含み笑いを交わした。
「閣下、何か悩み事ですか・・さっきからため息ばかり吐いてらっしゃいますが・・・」
坂田は少し茶目っ気のある笑みを浮かべて、山内に語りかけた。
「うるさい!解っていて言うな!坂田!」
山内は坂田の明るい性格を良く思っている、彼はどんなに窮地にたってもあの陽気さを失わず、作戦を遂行していける、もっとも信頼できる部下の一人だ。
「少しは副師団長を見習ってはいかがですか?」
「坂田君どういう事かな・・・」
坂田の言葉に鈴木がじろりと睨む、
鈴木は坂田とは違いいつも冷静沈着であり、物事にあまり動じない性格である。
「まぁ現地に行ってから考えても遅くは無いと言う事ですよ」
「と言う事は貴官はそう思っているのかね。」
山内は鈴木を見てたずねる。
「はぁそんなところです。」
「しかし、上は何を考えているのだろうな。」
「ネルフに足を向けて寝られないって所ではないでしょうか、例のマル特兵器の件がありますし」
「ああっ、あれか、あれも本当に役に立つかどうか解らんぞ。」
「しかし、上はそう思っていないでしょう。残念ながら・・・」
「結局俺たちは貧乏くじって訳か・・・・」
山内の懸念は大当たりだった。
これから3人の身に何が起こるのか、まさに前途多難、(笑
ヘリは一路第三新東京市へと向かう・・・・・・
『戦略自衛隊』
マモルと作戦部長件総合本部総参謀長の田所は第七師団長を迎えるにあたって、最終確認をおこなっていた。
「田所さんだいたいこんな所ですね配置と必要事項は」
「こんなもんでしょう、最初から全ては無理でしょうから・・・しかしこんな無茶聞いてくれるでしょうかね。」
「山内さんは優秀な方ですし、坂田さんや鈴木さんも解って頂けると思いますが・・・」
「説得するには時間が掛かると言う訳ですか・・・」
「今日中に説得できれば良いと思ってますが・・・」
そんなマモルの話しを聞きながら、田所は笑いながら昔を思い出す。
彼自身最初にマモルに国連軍で部下として任官した時、こんな若造になにが出来るのかと思ったものである、しかし、いざ作戦が始まるとその卓越した能力、指揮で、信じられない戦果を上げていった、最初は偶然と思ったが、いつの間にかこいつは本物だと心底惚れ込んでいた自分が居た。
マモルに対してそう思う部下は自分一人では無い、今でも国連軍の中にマモルに師事する人間は大勢いる。
その中からネルフに出向してもらう人選も完了している。
後は順次着任を待つばかりだ。
ネルフは戦自から冷たい対応をされていた、偵察、哨戒等は主に国連軍(自衛隊)に協力を求めていたが、国内の事に関しては軍務的に戦自に難癖を付けられ、予定が遅れている。
第三新東京市の建設物資輸送の護衛はネルフの保安隊の仕事だが、ライフル等の携帯や護衛の装甲車の移動許可等に子供じみた様だが一々介入してきた、マモルが着任するまで冬月が対応していたが、テロ対策の為にどうしても保安要員の武装は必須であるし、建設物資等に盗聴器や爆弾等がしかけられたらたまった物ではい。それだけで工期が大幅に遅れてしまう。
冬月もほとほと困っていた様だ・・・必要書類をそろえても中々許可が降りず、船積みされた機材や物資が立ち往生状態になる事もしばしば有った、その度に日本政府に上申するが、一時期良くなるが、暫くすると、また元に戻る・・・・・
戦自の立場にしたら自国の領地に特務機関だか何だか知らないが、武力集団が勝手にある一部の地域を占領し、要塞を築いてるのである、しかも来るかもどうか解らない怪獣退治の為に・・・
彼らからしたらまさしく「ふ・ざ・け・る・な!!!」(怒
と言う事になる
しかも上層部、特に制服組みはどうもネルフと結託している様だし、技術協力と称して武器の開発情報等も漏らしていると聞く、そんな中、上訴部からの命令で、第七師団のネルフ防衛派遣と特別教育隊のネルフへの接収を言い渡されたのだ・・・・
しかも自分達の仲間が糾弾され逮捕者まででた・・・・
そんなネルフのやり方に戦自は冷淡だっが、ネルフの見解は違う・・・
田所は「特別教育隊」の事を思い出した様に話す。
「第七師団はともかく、特教隊の方が、酷かったです。まったく一度甘い汁を吸うと人間はあそこまで落ちてしまうかと思うと情けない限りです。」
田所は先日マモルと連れ立って「特別教育隊」に見学に行った、陸将が見学に来ると言う事もあって、見た目まさに健全な部隊に見えたが、子供達の目が全てを物語っていた。
恐怖に怯える目、目、目、マモルと田所は難民キャンプの子供達の事を思い出していた。
何時襲ってくるか解らない虐殺者に怯え、大人達の顔色を伺いながら毎日を過すあの子達の瞳・・・
それと同じ瞳が此処にある。
セカンドインパクトの一番の犠牲者である、子供達
マモルはその子供達を利用し、利益を貪る、大人達に激怒していた。
ネルフ本部に帰ると、情報部部長を呼び出し、特別教育隊を監視させ、その実情を押さえさせた。
それを戦自情上層部にリークし、強引にネルフへ移設を急がしたのである、もちろん教官や管理官等は一切拒否した。
子供達は新たに作られた松代の訓練施設に移され、全寮制のネルフ幼年学校の生徒として迎えらた。
5歳児以下は保育施設に移され、沢山の保育士にかこまれて、子供として優しく育てられる事なり、6歳の小学校から18歳までの子供達は 幼年学校、中等部、高等部として、普通の教育も受けられる様になり、少ないが歳相応のおこずかいも支給される様になった。
軍事教練は一般として中等部から始まり、高等部卒業と同時にネルフの保安課への就職へと進んで行く、また、子供達の中から大学の進学希望が有ればその学力により、進学が許可される。
戦自や自衛隊の防衛大学、一般の大学等の学費は試験に合格した時点でネルフから奨学金として出され、卒業後、ネルフ又は戦自、自衛隊に就職を約束に返済免除となる。
この幼年学校が開校された時は松代の住人の中には孤児達にたいして、偏見を持った者も居て、生徒を冷ややかな目で見ていたが、規則正しく、礼儀を重んじる生徒達の姿を見て、彼らの休暇時には進んでホームステイや交流会、運動会や学園祭等のイベントに参加して行くようになった。
また生徒達も町に貢献する為に町の清掃や治安パトロール、高齢者慰問等、町の人々の暮らしに溶け込んでいった。
マスコミにも紹介され、屈託の無い笑顔をみせる生徒達の姿が全国に流れ、全国各地から自分の子供も幼年学校に入れたいとの問い合わせや質問が殺到し、やがて一般公募も行われる様になっていく。
人材の育成は社会において、必須条件であり、その国の教育の姿勢がその国の将来を決めると言っても過言では無い、20年後30年後の未来は現在の子供達に係っているのだから・・・・
マモルは田所と一緒に第七師団の幹部を迎える為にヘリポートに向かっていた。
「もうそろ着く頃ですね」
「ええっ、お迎えの用意は済んでいますか?」
田所は微笑みながら、
「完璧です。」と答えた。
ヘリポートに着くとヘリポートの中心からレッドカーペットが入り口まで引かれそのカーペットの左右に保安第一課の隊員がライフルを持ち待機していた。
脇には式典音楽隊が控えており、その陣容は軍のVIPを迎えるのに相応しい陣容である。
マモルは満足げに頷くと、休めの姿勢を取りヘリコプターの到着をまった。
やがて金時山の上空より戦略自衛隊のヘリがヘリポートに向かってくるのが視認された。
上空から山内は工事中である第三新東京市のバトルフィードを見て驚嘆していた、もちろん坂田も鈴木も同じく口を開いたまま驚きを隠せない。
坂田は子供の頃夢見たSFの世界を思い出し、胸がわくわくする衝動にかられた。
(すげぇ〜こりゃ〜凄いとこに来たわ〜♪楽しみだな〜これから何が出てくるか・・・ムフフッ)
坂田はチラリと山内の表情を見て、ニヤリと笑った。
(お〜っ親父さんまた思考の海へ潜水開始ですか〜これは見物だな〜♪)
鈴木は身を乗り出して少しでも細部を見ようとキョロキョロしている。
ヘリの機長から間もなく着陸のアナウンスが入る。
3人は席に座り直して着陸を待つ姿勢になった。
ヘリがヘリポートに着くと最先任と思われる下士官が2名入り口の左右に直立して見事な敬礼をみせる。制服は赤いベレー帽にベイジュ系の制服で、ズボンには細い黒色のラインが入っている。
ヘリのエンジンが停止してローターの回転が止まるのを待ってヘリの入り口が開けられ坂田、鈴木、そして山内の順でカーペット上に降り立つ、扉が開けられるのと同時に音楽隊による演奏、栄誉礼「冠譜」及び「祖国」が演奏された。
この曲は本来、自衛隊及び、戦自が国賓級のVIPを迎える時に演奏される曲で、ネルフは3人を国賓級の扱いで迎えた事になる。
カーペットの左右に並んでい 隊員は一斉に捧げつつの姿勢を取り3人に顔を向ける。
その完璧な出迎え方に山内は少し驚いていた。
(ほうっ!少しは礼儀を知っているようだな、少しやり過ぎではあが・・・・)
そう思いながらカーペットの上をマモルの方に向かって進んで行く。
マモルと田所は山内達が自分達の前に立つ最高のタイミングで先礼をした、これも見事な敬礼であった、3人は二人に答礼をし、2人の礼に答えた。
此処にネルフの司令官及び副司令官は居なかった。
本来この二人が出迎えるべきかもしれないが、ここで出迎えると逆に官位が上のゲンドウに先礼をしないといけなくなる、マモルの細かい配慮である。
「閣下!ようこそネルフに御出で頂きました。全隊員、職員一同心から皆様を歓迎致します。」
と爽やかな笑顔で、手を出した、山内は握手を返しながら
「ありがとう」と一言返しただけだった。
田所は3人に向かって一礼をし自己紹介をした。
「ネルフ統合作戦本部、総参謀を拝領しております。田所と申します。宜しくお願いいたします。
ただいまから司令室にご案内致しますのでこちらへどうぞお進みください。」
田所の案内でマモルを含む5人はネルフの本部に向かう高軌道エレベータに乗り込んだ。
乗り込んだエレベータは来客専用のエレベータで、ネルフ本部に直通の展望エレベータになっている。
エレベータが動きだす、最初はまっくらだった景色がパネルの表示が半分程減った時に突然視界がひらけた。
「「「おお〜つ」」」
「こ、これがジオフロントか・・・・・」
3人は地下の第三新東京市を初めて見て驚きの声を上げた、噂には聞いていたが、本当に都市が地下にあるとは・・・3人は目に入る景色に魅了された。
やがてエレベータはネルフ本部の建物の中に入り、扉が開いた。
機動通路にのり、総司令官室の前に着く、警備兵が2人立っており、マモル達に向かって敬礼をする。マモルが扉の横のインターホンのボタンを押して、
「天宮です。戦略自衛隊第七師団師団長、山内陸将、第七師団福師団長鈴木陸将補、総参謀長坂田一等陸佐を御連れいたしました。」と報告を入れる。
インターホンから冬月の声で
「御通ししてくれたまえ」
と返事が帰る。その言葉を聞いて敬礼をしていた隊員の一人が扉を開けた。
マモルを先頭に5人が中に入ると執務机の前にゲンドウと冬月が立って待っていた。ゲンドウは髭を少し短く刈り込んで整え、サングラスも外していた・・・・
冬月の仕業らしい・・・・・
マモルは思わず吹き出しそうになるのを必死でこらえた。
田所は下を向いたまま震えている。
そんな二人を見て冬月は心の中でVサインを送っていた。
司令室はかなり広々とした空間だったが、なんとなく落ち着いた雰囲気が漂っている。
山内を初め3人はゲンドウにと冬月に向かい敬礼をした。
ゲンドウと冬月も答礼を返す。
3人はゲンドウと冬月に向かい自己紹介をした。
「戦略自衛隊第七師団長を勤めます、山内です。本日はネルフ本部にお招き頂き、ありがとうございます。」
「同じく副師団長を勤めます。鈴木です。」
「同じく参謀長を勤めます。坂田です。」
ゲンドウは握手を山内に求めながら
「碇です。今日はわざわざおこし頂きまして、ありがとうございます。」
と残り2人とも握手を交わした。
冬月も握手を交わしながら、
「副司令を勤めます、冬月です、宜しくお願いいたします。」
と挨拶をし、
「さぁどうぞ御かけください」
と司令室の中にある応接セットに案内する。10人程が座れるかなり大きなセットだ
テーブルにはベージュのテーブルクロスが掛けられ真ん中にネルフのマークが入っている。そのテーブを囲んで一同が座ると次室の扉が開き秘書官がコーヒーを運んできた。
一流のホテルの給仕に匹敵する手付きでコーヒーを給仕していく。
終わると一礼をして次室に戻っていった。
秘書官が下がると、ゲンドウは3人に向かって、改めて口を開く
「改めて本日はお越し頂きありがとうございます。」
山内は既に毒気を抜かれていた、心の中で、動揺しながら、
「いえっ、こちらこそお招き頂き、嬉しく思います」
と答えてしまった。
冬月がにこやかに微笑みながら3人に語りはじめた。
「この度は非常な無理なお願いを日本国政府及び、戦略自衛隊の皆様に致しました。特に実働部隊である第七師団の皆様には心からお詫びしたいと思ってります。私達二人は司令と副司令を拝命しておりますが、どちらかと言えば政治屋と技術屋の方でして、実戦はこの天宮君と田所君に御任せの状態なのが、現実です。そこに皆さんの様な方々にご協力頂ける事は誠に心強く感じております。どうか今後共宜しくお願い致します。」
ゲンドウと冬月は頭を下げた。
山内はその二人の姿をみて益々混乱した。
戦自での噂と違うのである
ネルフは慇懃無礼な集団であると聞いていた。
それが、礼を尽くし、司令官までが自分に頭を下げる事など考えられない・・・・・・
「頭をお上げ下さい、私達も出来うる限り協力をおしみませんので・・・」
「ありがとうございます。」
冬月は微笑みながら改めてお礼を言った。
坂田は山内の戸惑う感情を嗅ぎ取って心の中で爆笑中だった。
(親父のやつ、そうとう動揺しているなぁ〜俺自身もかなりビックリしている位だからなぁ〜鈴木さんも、結構戸惑っているみたいだし・・・)
その後10分程雑談を交わした後、冬月が次のスケジュールについいて話し始める、
「それでは今後の事についてですが、先程も言った通りに実戦の事については天宮君達に任せてありますので、お聞きください。その前にネルフ内と第三新東京市を是非ご見学ください。工事中でまだ行けない所もありますが、その部分についいては見学の後ご説明があると思いますので、私達もご同行できればと思いましたが、何分職務が多忙なので、申し訳ありませんが・・・」
山内は
「いえいえ、お気使いありがとうございます。お気持ちだけで十分です。」
「そうですか、それでは天宮君、田所君後は頼んだよ」
「了解いたしました。」
司令室に居た間マモルと田所は一言も発言はしなかった・・・
じっとゲンドウ、冬月、戦自の三人の話しを聞くだけだった、こんな場合上官が発言を求めないかぎり、勝手に発言等は許されない、非公式とは言え、これは外交であるからだ・・・
マモルと田所に案内されて3人は総司令室を後にした。
鈴木はネルフの今回の第七師団の協力要請は政略的なものではないのかと頭の中で分析していた、先程のネルフ総司令と副司令の言葉を考えると戦略的事よりも政略的な臭いが強い、第七師が第三新にいる・・・・・・この事だけでも政治的抑止力になるのでは無いか・・・・
(まだあの天宮統合作戦本部長の意図を聞いてないので、最終的な判断はできなが・・・・・・)
3人はマモルと田所の案内で第三新東京市の視察を開始した。
それは想像を絶する、都市だった・・・・・
特に使徒戦における、バトルフィールドの装備、構造、システムは3人の軍人としての本能を刺激した。
自足自給を目指した都市機能、技術部の膨大な施設、この巨大な空間に人が生活して行ける全てが詰まっている。
まさに永久要塞だ・・・・
坂田は田所に盛んに質問して、都市機能についての情報を収集している
山内と鈴木はマモルの説明を聞きながら、何か危険な空気を感じていた。
ここまでネルフが手の内を見せることに・・・・・・・
そして極め付きはエヴァンゲリオンのゲージに案内された時だった・・・・・・
「こ、これが・・・対使徒戦、秘匿兵器・・・・・」
「凄い!トライデントなんかと比べ物にならん・・・・・」
「こんな物が本当に必要な物なのか・・・信じられん」
3人の心は完全に陥落していた・・・・・・・
視察が終わり3人は本部内にある、VIP用のレストランに通され昼食を振る舞われた。
一流のシェフが作る絶品のフランス料理であったが、山内は味が良く解らない程、思考の海に沈んでいた。
マモルの配慮で、個室に3人だけだったが、食欲が湧かない。
坂田を見ると「これは旨い」と幸せそうな顔をして食事を堪能している。
鈴木は淡々と表情を変えず、食事をしている。
普段と変らない二人の姿を見て飽きれた・・・
(こ、こいつら・・・・人の気も知らんと・・・・)
食事が一段落して最後のデザートとコーヒーが出た所で、山内が口火を切った。
「鈴木君、貴官はどう思う?」
「ネルフの事でしょうか?それとも第三新東京市の事でしょうか?」
「全部だ!此処に来てからの全部だ!」
「閣下はお気にめしませんか?」
「うっ!そ、そうだな気に入らん・・・と言うよりも俺の能力の範囲を遥かに越えていて、どうして良いのか解らんし、それを考える気力も無くなりつつあるよ・・・・」
山内は苦笑いしながら答えた。本当は自分の考えは有るのだが、その考えが正しいのかを整理する為の鈴木への質問だった。
「苦労性ですな・・・閣下は」
坂田が笑みを浮かべながら発言した。
「お前には言われたく無い!」
むっとした顔して山内は坂田を睨むが目が笑っている。
こんな時の坂田の性格が羨ましい・・・・
ナプキンで口元を拭いてから鈴木が落ち着いた声で話し始めた・・・・
鈴木は盗聴されている可能性があるので発言を控えていたが、山内の質問で気持ちが変った、向こうも本音できているのならこちらも本音を言ってみか・・・・と
「自分の今までの所見はネルフは本気で使徒戦があると考えていると思います。今まで、噂や、断片的な情報しか有りませんでしたから、この計画自体が欺瞞の疑いがありました。しかし、あの装備やあの秘匿兵器は本物だと小官は予測いたします。したがって、今日我々を招待したのはその事を我々を通して、使徒戦は本気であると言う事と我々に本気で協力を求めている事を伝えたいとの意思の現れだと思っています。」
「うん、成る程、では何故、我々(第七師)が呼ばれたのだと思うかね?」
「それについてはまだ答えは出ておりません、多分これから天宮陸将から説明が有るでしょう。ただ碇総司令との会見で思った事は第七師団が戦自最強だと言う事が重要な様な気がいたしました。第七師団が此処を防衛する事で戦術的には無意味でも此処の重要生はアピールできるからです。政治的な配慮と言う所でしょうか・・・我が国に取ってもそれは重要なことです。我が国からすると色々な噂が有るネルフを最強の第七師団で監視していると言うアピールになるからです。
使徒戦が本当ならば、此処が完全に完成するまで、妨害工作が一番の敵となります。」
「だが、軍事的には防衛できるとしてだ、テロには我々は対応できんぞ」
「はい小官もそれを疑問に思っております。機甲師団が防衛戦には不向きである事には変わりありません、先程もお話しいたした通り、政略的要素しか今の所考えが及びません」
「坂田、お前はどう思う?」
二人の話しを頷きながら聞いていた。
「そうですね、自分も副師団長のご意見に賛同致します。付け加えるなら、第三新東京市の設備についてですが・・」
「どんな事だ?」
「はい、此処の設備の説明を田所さんに詳しく聞いてみたのですが、どうも此処の建設意図が対使徒戦だけでは無い様な気が致します。
そうですね、100年、200年後を見据えた建造物として設計されている様な気がします。自分は使徒戦が何時まで続くかは現段階で予測はできませんが、使徒戦以外の他の目的も有る様な作りになんているのでは無いかと思いました・・・・
セカンドインパクトの原因となった、使徒の卵でしたか、今回はそれを目の前で見る事が出来ませんでしたが、サードインパクトを防ぐ為だけの物ならば此処までの施設は必要ないと思いますよもっと軍事的に特化した要塞で十分な様な気がしますが・・・副師団長と同じく自分自身まだ答えが出ておりません。」
「確かにな・・・」
山内と鈴木は坂田の意見に頷く・・・・
「結局、あの若いのに聞かないと何も解らんと言う事だな・・・」
坂田と鈴木が頷く
山内は自分の考えと二人の考えがほぼ同じ事を確認して、整理がついた事に多少安堵した。
それでもこの件に関わる事の危険性に関しては拭う事の出来ない何かを感じとっていた、それは軍人として防衛本能と言うか危険を嗅ぎ分ける鋭い嗅覚が、頭の中で危険信号を鳴らし続けていた・・・
食事が終わるのを見計らった様に田所が3人を迎えにきた。
「失礼致します。お食事はいかがでしたでしょうか?」
坂田が笑いながら答える
「いや〜美味しかったですよ、田所さん達はいつもこの様な食事を食べてらっしゃるのですか?」
「いえ、普段は普通の食堂で食べています。たまにお客様と会食する時に此処の料理をご相伴させて頂いてますが・・・」
田所も笑顔で答える
「それでも羨ましい限りです。」
「ありがとうござます。所で山内閣下、もしよろしければ、これから今後の事につきまして、天宮本部長より閣下と皆様にご説明を致したいとの事ですが、ご足労願いますでしょうか。」
山内は軽く頷いた。
「それではご案内いたします。」
3人はマモルの執務室へと案内された。
中に入ると先程の総司令室と比べてかなり狭いが落ち着いた雰囲気の良い部屋だ、その一角に10人程座れる会議スペースがあった、会議用の様々な機材が設置され、小規模な作戦司令室として機能できそうだ。
3人は部屋でまっていたマモルの出迎えを受けその会議スペースに案内されて椅子に着席をする
反対側にマモルと田所が着席をした。
3人が案内された席には様々な資料がおかれていたが、その一番上に「誓約書」と書かれた書類が置かれている。
「山内閣下、第三新東京市は如何でしたか?」
マモルは微笑みながら感想を聞いた。
「そうですな、驚きました、何もかも・・・・・特にあのエヴァンゲリオンと言う秘匿兵器には想像を遥かに越えた物を感じましたな・・・・」
山内は直ぐに本題に入る事を決意する。
「そうだな、単刀直入に聞こう!第七師団に君は何をさせたいのだね?」
その質問にマモルも真剣な表情になり答える。
「閣下、これから先は国連法AF-20、第32条により、極秘情報秘守義務が含まれる情報がございます。大変申し訳ございませんが、そこにございます。誓約書を確認の上サインをお願い致します。その前に山岸総理より山内閣下へ書簡が届いておりますのでご覧下さい。」
マモルは山岸から預かった、書簡が入った封筒を山内に手渡す。
3人は驚愕した。
AF-20、第32条に違反すれば銃殺は間違い無い・・・・・・それほどの情報を今から聞かされるのだ、鈴木と坂田は山内の顔をじっと見つめた。
山内は書簡の封筒を開け、山岸総理からのメッセージを読んだ・・・・・・
小刻みに手が震えている。
内容は総理から直接山内への名指しの命令書だった・・・・・・・
日本の運命はこの使徒戦及びネルフの奮闘に関わっている、第七師団は無条件でネルフに協力をしろと書かれてあったのだ。
「うううっ!」山内は唸った
(これか!何か危険な予感がしたのは・・・・最初から仕組まれていたのか・・・・くそっ!山岸の野郎・・・)
暫く思考の海に沈んで居た山内は意を決した様にマモルを睨んだ、
「解った!サインをしよう・・・その変わり全て話してもらうぞ!」
それは山内と言う軍人の姿だった、ネルフに来てからの外交的な姿と違い一人の老練な軍人の姿へと変っていた。
それを見た鈴木と坂田は顔を見合わせ、「これ、あるかな!我が司令官!」と同じ決意で書類にサインを始める。3人の誓約書のサインを確認したマモルは
「ありがとうございます。皆さんの決意に私達も全力でお答え致します。それでは内容の説明にはいらさせて頂ますが、よろしいでしょうか?」
山内は深く頷く、
「では私から説明をさせて頂ます。」
田所は機械を操作しながら、ネルフ組織編成から始まり、第三東京市の構造及びバトルフィールドの設備武器の性能から、マギーによる兵器リンク及び監視衛星や哨戒システム等を細かく説明して行く。
そしてセカンドインパクトの真相やサードインパクトの真相、エヴァンゲリオンの製造過程、パイロットの事、使徒の秘密、補完委員会、ゼーレの計画にまで及んだ。
山内は今日何度驚いた事だろうと説明を聞きながら思った、悪い夢を見ているのではないか・・・・ほっぺたをつまんでみたい衝動を必死に押さえていた。
話しが突拍子も無い・・・人類の補完サードインパクト、使徒、ゼーレ、そしてエヴァンゲリオンパイロットが子供・・・・
冗談にしたら達が悪すぎる。
鈴木と坂田の方を見るとさすがに呆然としていた。
田所が全ての説明を終えた所で質問を即した。
「以上で、ご説明を終わらせて頂きます。何かご質問等がございますでしょうか?」
山内が呟く様に発言した。
「これは本当の事なのかね・・・・」
マモルが答える
「残念ながら本当の事です閣下」
山内はマモルのその一言に改めて落胆した。
(なんて、事だ・・・・)
坂田が質問をする。
「お話しは信じがたいですが、これが事実として第七師団の役割についてお話し頂きたい。」
(まるで子供の頃見た、SF映画みたいじゃないか!まさに地球防衛軍って所か・・・・でもあの話しでは自衛隊は捨て駒の様にぼろぼろになったなぁ〜まずいぞ!これは・・・)オイ!
「その件につきましては今からご説明をしたいと思います。基本的には第三新東京市の外部防衛と使徒戦時の一般市民の避難誘導です。これはこちらで考えた配置案です。」
画面に第七師団の第三新東京市での配置図がしめされる。
「使徒戦には第七師団は参戦しない事を基本とします。しかし緊急時には救援要請をさせて頂きたいと思っております。これに付いてはテロ対策も同じです。ネルフのカウンターテロ部隊が、大規模な火力支援要請をした時はご協力をお願い致します。」
(よかった〜使徒戦には基本的に参戦は無しか〜♪ATフィールドだっか!あれが有る限りこちらの火力が通じない事を考えると妥当だな・・・しかし本当の目的は何んだろう・・・)
坂田は内心ワクワクしながら説明を聞く(・・・・ケンスケか、おまえわ〜(==;)
鈴木は配置図を見てこれでは機甲師団としての機能をまつたく無視していると少し怒りを覚えたが同じ事を考えていると思われる山内が黙って聞いているので、自分が質問してみる事にした。
「質問をよろしいか?基本的な任務は理解しているが、この任務について第七師団を使う理由が理解できない、むしろ、歩兵中心の第三師団や第四師団の方が適していると考える、配置図を見ると機甲師団としての機能がまったく生かされて無い、この配置案は何を目的として立案されたかがしりたい、」
(多分欺瞞かなにかだろうな、今までの説明で彼らが愚か者ではない事は十分理解できているが・・・)
「ここからは私がご説明いたしましょう」
マモルが話し始めた。
「私が第七師団にご協力頂きたのは3つです。一つ目は田所参謀長のお話しにもありましたが、この第三新東京市の完成までの防衛任務、使徒戦での一般市民の避難誘導と治安維持です。これに関して言えば他の師団にお願いしてもよかったのですが、此処で何が起こっているのかを第七師団の皆さんに肌で感じて頂くのが本当の目的であります。もちろん政治的な事も配慮していますが、此処に駐屯して頂ける事により、連絡や情報交換がスムーズに行える事が最大の理由です。」
3人は納得した様子で頷く、
「2つ目はA-801ネルフの特務権限及び特別指揮権の破棄、日本国政府に指揮権の譲渡による第三新東京市の占領を第七師団にお願いしたい。」
(((な、なに〜っ!!)))
3人は一度収まった驚きをまた爆発させた・・・・
(今日で3年は寿命が縮んだだろうな・・・御気の毒に・・・・)
田所は彼らを見ながら同情してしまった。田所自身がこの事をマモルから聞かされた時の事を思い出していた。
「第17使徒戦が終わった時点で日本国政府はゼーレの命令通りにA-801を発令する事になるでしょう。われわれネルフはそれを受け入れ日本国政府の指揮下に入ります。第七師団は速やかに第三新東京市の占領と治安維持をお願いいたします。この配置はその為の物です。我々ネルフはこの時点では素直にA-801を受け入れますので他の組織が介入する前に第七師団に占領して頂く必要があるのです。」
「成る程・・・・・」
鈴木は配置図を見て納得した・・・これならあっと言うまに第三新東京市への全軍進撃が可能だしかし・・・これもまた他の師団でも可能な筈だが・・・・・
(3つ目を聞いてから判断するか・・・・)
鈴木はもう開き直っていた・・・
山内は黙ってマモルの話を聞いていたが、ふとした疑問がわき上がった。
「此処までは解った!しかし、これではサードインパクトを防ぐ為に日本国政府が巻き込まれる事になるな・・・」
マモルはさすが、山内さんだと思った事の真髄を的確に判断できる人だと自分の目に狂いは無かったと満足した。
「その通りです。閣下、日本はサードインパクトを阻止する為にゼーレの要求を拒否するでしょう。その時ゼーレは日本に対し侵攻を開始すると思われます。多分陸軍は中国、ロシア軍が中心になると思います。艦船に関してはまだ確定はしておりませんが、国連軍太平洋艦隊はこちらの味方につける為の工作中です、最低でも、参戦はしないでくれると判断しておりますので、大西洋艦隊が敵に回るでしょう。戦場は第三新東京市周辺限定になると思います。彼らはサードイパクとを起こせば済む訳ですから、短期局地戦でくると思われます。航空戦力ついては自衛隊による制空戦にが鍵ですが、戦力的には十分だと考えております。そして閣下、3つ目は第七師団による上陸軍の殲滅です。」
マモルの最後の一言に山内の目がキラリと光った・・・・
その後部隊の移転に関する打ち合わせを済ませた3人は第三新東京市を後にした。
山内帰りのヘリの中で疲れきった神経を休めたいが、今日一日の事を思い起こすとまだ信じられない思いと、自分に課せられた責任の重さを痛感していた。失敗したら人類が滅ぶ・・・・・
(冗談では無い!なんで俺が・・・こんな事に・・・・)
(泣きたい心境とはこの事だな、しかしあの小憎っ〜やってくれるじゃないか・・・)
鈴木と坂田をみると部隊の移転計画について相談を初めていた・・・
多分職務に入る事によって現実逃避を始めたらしい・・・
「ふっ」と二人を見てため息まじりの笑いを浮かべ2人の頼もしい部下を改めてみた。
(やるしか無いか・・・・)改めて決意をする。
しかし心の中で山内はルルル〜と涙を流し続けていた・・・・
(やっぱり貧乏くじだな・・・・)
戦自第七師団3人組みに幸あれ・・・・・・(瀑
戦略自衛隊了
takeの戯れ言
「戦略自衛隊」終了しました。(°∀°)
この戦自の3人は今後活躍していきます〜♪
無理難題をマモルから次から次へと言われて冬月さんと同じ目に遭う山内さんの活躍をご期待ください〜♪(´・ω・`)
叱咤激励宜しくお願い致します〜♪(-ω-)ゞ